消費税と社会保障財源の相性について(16~17年度 第3回保団連代議員会 発言通告)
発言テーマ:消費税と社会保障財源の相性について
本年4月10日付けの「全国保険医新聞」と「京都保険医新聞」に、奇しくも同時に、「消費税と社会保障財源」を扱った記事が載った。前者には、「主張『消費税に頼らない社会保障財源を』」として、後者には、16年11月の兵庫協会の政策研究会「日本の財政改革 成長依存社会からの脱却」講演録(井手英策慶大教授)の転載としてである。
前者の言い分は、大企業の内部留保(最近の数字では350兆円以上)を吐き出させれば、社会保障は十分に充実する、というものである。そして、「消費税が導入された1989年以降の27年間の税収の大部分が法人税の穴埋めに使われた」「逆進性がある消費税を経済的弱者救済の手段である社会保障に用いるということは、税の所得再配分機能を否定するものであり、根本的な誤りである」とも言っている。
後者では以下のように述べている。「消費税は逆進性があるから問題といわれるが、給付がきちんと行われれば問題はない」「今後消費税を引き上げる時は、全てを教育や社会保障の充実にあてるという法案にすべき」「ヨーロッパの社会保障は、少しずつ給付を拡大し、少しずつ増税を行い、今の豊かな給付と高い税収がある」。
両者は、社会保障の財源として富裕層の税率をもっと上げるべきという点では、一致している。だが、消費税に対しては異なる考えがあるようだ。前者は、消費税を上げてもまた大半が別の方に回されるという政府への不信感があり、理論的にも消費税と社会保障財源とは相性が悪いと確信さえしている。後者は、二者の相性については楽観的というが極めて肯定的である。
他の関係著書を渉猟してみた。「消費税の社会保障財源の適格性は、法人税や所得税に比べ、景気の変化に左右されにくい」とあったのは、相性のいい例。「医療保険制度のうえでは、税方式に比べ社会保険方式の方が権利性や普遍性が相対的に強い(つまり、保険料を払っているからちゃんと診てくれ、と言える)」とあったのは、無理を承知で、相性の悪い例。
現場と机上の違いとか、実体験によるものと観念論的な考えに依るものの差があるのだろうか。「消費税に頼らないで現実は動くのか」と、大いに迷う昨今であるが、保団連執行部に迷いは全くないのでしょうか。