岩手県が提言している地域医療基本法(仮称)について(保団連第48回定期大会 発言通告)
発言テーマ:岩手県が提言している地域医療基本法(仮称)について
現在、地域医療は、医師不足と地域偏在という問題を長い間抱えながら、医師の献身的な努力と働きによって支えられているが、今後迎える超高齢化社会や地域包括ケアの推進により、医療の需要が大きく変化し、確実に増していく。しかし、「勤務医労働実態調査2017」でも明らかなように、医師の過酷な労働実態はなんら改善されていない。その要因についても、絶対的な医師数の不足や診療科の偏在等が挙げられており、医療機関や地域で努力すれば解決できるものではない。
岩手県でも、医師不足解消のための独自の政策を実施しているが、全国との比較においても、問題解消にはほど遠い状況である。そこで岩手県の達増拓也知事は、「現状を打開するためには国レベルでの総合的な政策が必要」との考えから、「地域医療基本法(仮)」の草案を作成し、提言している。
まず、基本理念として、「医師や医療従事者を計画的に養成するとともに、当該医師を偏りなく地域に配置すること等により、国民が居住地域にかかわらず等しく適正な医療を受けることができること」とし、概要としては、各都道府県に取りまとめをさせていた「地域医療再生計画」を、まず国が策定し、各都道府県は、それを踏まえて「地域医療再生計画」を策定すること。国が医師等を計画的に養成し、適正な配置を行うこと。また、国民の責務として、疾病に関する正しい知識を持ち、予防に努め、医療サービスの適正な利用に留意すること。医師等の責務として、国及び地方公共団体の施策に協力し、地域医療再生に寄与するよう努めること。政府は、地域医療再生の施策を実施するための法整備や財政措置を講ずること。などが明文化されており、これによって、医師の地域偏在を全国レベルで解消するという狙いがある。
(概要・全文については、岩手県のホームページの中に特設ホームページが設けられているので、参照いただきたい。http://chiikiiryou-iwate.jp/)
根本的な医師不足問題の解消について、都道府県や各自治体に丸投げするのではなく、国策として取り組むことは急務と思う。しかし、その解決策が、医療現場の状況を考慮せず、医師への規制や法による強制によって成されるものだとしたら、それも問題であると考える。
この地域医療基本法(仮称)草案は、過疎化問題を抱え、震災を経験した地方自治体の立場で現状の問題を踏まえて策定されたものであるが、法制化等の必要性を含めて、この草案が地域医療崩壊を食い止める術となれるのか、同様の問題を抱える地域の協会に紹介する。