<談話>「東日本大震災被災者の医療費窓口負担の免除継続に関して」を発表しました
<談話>
2020年12月7日
岩手県保険医協会
会長 南部淑文
東日本大震災被災者の医療費窓口負担の免除継続に関して
達増拓也知事は11月16日の定例記者会見にて、東日本大震災で被災された国民健康保険と後期高齢者医療の医療費窓口負担の免除を来年1月以降も継続する方針を示しました。ただし、4月からは住民税非課税世帯のみを対象に継続し、12月を目安に終了を検討していくとのことでした。財政問題から当初は沿岸12市町村のうち多くが免除終了の意向があるという厳しい中での今回の県の決断は、被災者の命と健康を守る観点から大いに評価すべきです。
一方で、必要とする医療を断念せざるを得ない方々が増加する危惧もあります。
当協会は震災直後からこれまで、被災された方々に医療費窓口負担に関するアンケート調査を毎年行ってきました。アンケートに寄せられた意見で最も多かったのが、免除の継続を望むとともに免除に対する感謝の声でした。一方で、医療費負担が発生すれば「受診回数を減らす」「受診できない」「分からない」が7割にもなります。すでに免除が打ち切られている社会保険の方の約6割が「通院回数を減らした」「通院できなくなった」と回答しています。
アンケートには「低収入・年金のみで生活が大変」との意見や、「食べるだけで精一杯」など、窮状を訴える声も多く認められます。県健康国保課によれば、一部負担金免除の対象者に占める住民税非課税世帯の割合は、平成31年3月31日時点で、国保42.2%、後期高齢者医療は76.0%、計56.3%となっています。
沿岸被災地は医療機関数が少ない上、公共交通機関の利便性も十分とは言えず、通院の交通費が負担となっている方もたくさんおります。
そのような中、先のアンケートには「免除があったから受診できた」との声も多数寄せられています。
近年、大規模災害が頻発している中で、被災から10年継続されてきた災害支援は一つのありかたとして全国的にも岩手モデルとして称されています。
県や市町村におかれましては、万止むを得ず免除に頼らざるを得ない方々を忘れることなく、せめて現状のままの継続を是非とも検討して頂きたいと思います。