第31回定期総会アピール
日本の来し方を顧みる時、先人に思いが至り少なからぬ感慨を覚えますが、常に順風ということでもありませんでした。度々の危機にも関わらず、それらを克服した故に現在があるのです。内憂により起きたものもあり、外患に因ったものもありましたが、昨今の暗澹たる状況は、為政者の姿勢にも原因があるのではないでしょうか。医療や健康にしても本当の価値を理解しようとしない人に、それらを切望する人の心情が平然と無視されています。
大きな混乱とともに4月から始まった後期高齢者医療制度に、全国各地の特に年金生活者は怒りの声を上げました。医療費の抑制を目的に、75歳以上の高齢者の年金から強制的に保険料を徴収し、老人の安住の場所を狭めているのです。 医師不足の問題も深刻です。失政に気付いた政府も対策を講じつつありますが、不足の解消には10年以上要すると言われています。また、医療界に導入された市場原理主義は、格差社会を助長しています。翻って、歯科医師過剰は、歯科医療の質的問題と相俟って、患者の全身にも関連する喫緊の課題となっています。
他方、自衛隊のインド洋からの一時的撤退、自衛隊イラク派遣の高裁による違憲判断といった平和問題を再考させる動きもありましたが、日本政府のチベット人権問題への消極的な姿勢や、米軍基地への常軌を逸した厚遇、さらに青森県六ヵ所の再処理工場放出の海洋放射能汚染、米国産肉牛と中国製冷凍ギョーザに代表される輸入食材等の国民の健康を無視した問題もあります。
われわれは、これらの諸々の危機的状況に逡巡することなく立ち向かい、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と憲法第25条が謳う理念を信じて、県民の医療を守るという立場で活動してまいりました。
岩手県保険医協会は、生命と健康が尊重される社会を実現するために、またそれに不可欠な平和の保持発展のために、多くの人々や団体と手を携え今後も邁進してまいります。
第31回定期総会にあたり、この決意を表明するものであります。
2008年6月8日
第31回岩手県保険医協会定期総会