「岩手県保険医協会」国民の医療と健康の確保を図り、保険医の生活と権利を守る

 

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総会
2009.06.07

第32回定期総会アピール

資本主義とはいえ、恐慌が不可避という根本的な弱点があるといわれます。今、その弱点が世界を席巻し、日本も市場原理主義の崩壊などの多大な影響を受けています。大企業は、次々に生産体制の縮小を余儀なくされ、下請けや派遣労働者などの非正規労働者が直接の被害を受けました。困窮する彼らに具体的な援助を実行したのは、国や政府というよりは、「年越し派遣村」を設置するなどした民間団体でした。

さて、後期高齢者医療制度が導入されて1年が経ちました。政府は、世論の強い反発を無視できなくなり、保険料の一部を引き下げ、保険料徴収方法を変更しました。しかし、高齢者の健康増進というよりも医療費抑制であるとの実体はそのままです。当協会は、昨年の6月県議会において他団体と共同で制度の撤回を求める請願の採択を得、また、市長が後期高齢者医療広域連合長を務める盛岡市議会においても、協会単独による制度の撤回を求める請願の採択が実現しました。

景気の悪化に伴い、国民健康保険の保険料の滞納が県内でも34,000世帯を超えています。長期滞納者が受診を必要とする時は資格証なるものが交付されますが、一時的にしろ10割負担であり、事実上の受診抑制です。自治体の財政悪化があるとしても、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の観点からも、早期に撤回すべき制度です。

深刻な医師不足は、遂に、4月から県立五地域診療センターの無床化という事態を招きました。地域住民に大きな不安と不満を残しましたが、党派を超え今後も行政とともに取り組んでいかねばならない大きな根深い問題といえます。

介護保険制度も多くの問題を抱えています。3年ごとの見直しにより、本年4月に簡素化、公平化を名目に要介護度認定方法が改定されました。介護費抑制だけが先行するのではと、現場では内容を疑問視する向きもあり、実施後も実状との乖離に注意を要します。一方では、特別養護老人ホームの待機者は5,000名以上となっており、家族の重い負担は想像に余りあります。介護分野への、国の予算の重点的配分が望まれます。

レセプトオンライン請求の義務化が足元に迫っていますが、時期尚早という理由で、神奈川県保険医協会を母体に義務化撤回を求める訴訟が起きています。岩手からも21名の会員が原告として名を連ねました。当制度による経費の負担や事務の激変に対応できないため、廃業しか選択肢がないという開業医も少なくありません。国の政策が、医療崩壊を加速しようとしているのです。

歯科においては、異常な低診療報酬がしばしば国会でも取り上げられていますが、改善の兆しは一向に見えません。一部大新聞の生半可な取材による独善的で扇動的な歯科叩きが横行するのに対し、大手雑誌による歯科界の窮状の特集が年中行事化しています。まさに、歯科医療の質の堅持が危機に瀕しているのです。

また、ここ一両年の貧困層の大量化、固定化とともに、医療をまともに受けられない人々が増加し、医療に携わるものとして看過できない情況です。それのみか、貧困は戦争への免疫力を低下させ、平和を考え維持するには、戦争放棄の憲法九条と前述の生存権保障の25条は、もはや不可分のものといわれています。それでは、景気の回復が到来しなければ、これらの非合理は克服できないのでしょうか。否、互助の関係性が真の豊かな社会をもたらすと唱える人がいます。

岩手県保険医協会は、県民の医療と健康を守るため、志を同じくする人々や各団体と協力し、このような情勢の打開に積極的に取り組んでいく所存であります。

 

第32回定期総会にあたり、この決意を表明するものであります。

 

2009年6月7日
第32回岩手県保険医協会定期総会