「岩手県保険医協会」国民の医療と健康の確保を図り、保険医の生活と権利を守る

 

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総会
2017.07.25

第40回岩手県保険医協会定期総会アピール

当協会は、1978年に第一回総会を行い、本日ここに第40回という節目の総会を迎えることができました。これも、偏に会員はじめ多くの団体や県民の皆様のご理解とご協力の賜と、この場をお借りして深謝申し上げます。

さて、東日本大震災発生から丸6年を迎えようとしていた本年3月、北陸自動車道高架下で、震災後に自殺したと思われる70歳前後の男性の白骨遺体が発見されました。陸前高田市を襲った津波で一家が行方不明となり、高齢で人生をやり直す気力もなかったのではとみられています。遠い異郷の地で、支援の手を待つこともなく、亡くなった家族の許へと急いだ時の絶望と孤独の深さは、計り知れないものであったのでしょう。傍らにいた私達の責任と言えば傲りともなりますが、被災者の方々の心中を斟酌することを、隣人として一時たりとも忘れてはならないと思います。

これまでに当協会は、6回の被災者アンケートを実施し、国や県に医療費の一部負担金免除の継続を要請してまいりました。しかし、被災者の総ての方にその恩恵が届いているとは言えません。物心にわたる支援は今後も必要としており、復興の一端を当協会も担っていく所存であります。

一方、震災・津波による福島第一原発の事故は、低線量被ばくの線量基準を決める際に科学的あるいは政治的という相克があるように、被災者に先の見えない不安を与えたままです。避難指示区域の人々と自主的に避難した人々との間に支援の差を設ける分断政策もあります。避難指示が解除されて帰還するにしても、避難者が絶対なる安全を確信したわけではありません。生活再建を優先してとか、帰心が募った余りとかと、必ずしも不安を払拭したうえでの帰還ばかりではないのです。

このような時期に、今村前復興大臣の暴言がありました。被災者の訴えの捉え方があまりに独善的であり、訴えの背後にある苦悩とか無力感に対しての洞察が全く感じられません。後任に原発推進派の吉野氏が就いたことは、メッセージ性の強い人選でありました。

今年の春は、各地で桜が絢爛豪華に咲きました。期を同じくして政府の高齢者負担増計画が動き始め、患者負担上限引き上げ、入院時の負担増、介護保険の利用料アップなど、多くが2017年度に実施または法案提出される見込みです。引き続きあらゆる世代への負担増も計画されています。これに対し、保団連や各協会・医会は「医療・介護の負担増の中止を求める請願署名」等を鋭意行っております。

医療政策の理念を語るとき、それが人間像・社会像に関わるとすれば、国家と国民の関係を規律する最高規範である憲法にまで遡る必要があるとされます。まず第25条には「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあり、さらに第13条には各種の権利・自由を包摂する基幹的な権利といわれる「幸福追求権」があります。幸福追求権が保障されることは、個人の自己決定権や個人の尊厳が確保されるということになるのです。私達の行動の原点は、これら2つの条文にあります。

高齢化により国民医療費は、2014年には1988年の対GDP比率で約2倍になっています。国民皆保険も社会経済の上に成り立っており、財源や人的資源にも制約があります。人類は国家レベルで昨今のような「超高齢・人口減少社会」を経験していません。医療財源の確保のためには、各専門職能集団も、自らの利益のためのみではなく公益的な観点に立ったビジョンを示す時期にきています。

このような情勢のもと、当協会は、会員はもとより各方面と連携し、保険医の使命と医療団体の責任を果たすべく尽力して参りますことを、ここに表明するものであります。

 

2017年6月4日
第40回岩手県保険医協会定期総会