「岩手県保険医協会」国民の医療と健康の確保を図り、保険医の生活と権利を守る

2024年度診療報酬改定は、厚労省による中医協への提案も、財務省が主導する医療費抑制が前提とされる非常に不条理なものとなりました。社会保障費では、毎年のように「高齢化に伴う自然増」が圧縮されています。自然増を圧縮するためには、診療報酬改悪および患者負担増や給付制限といった制度改悪を進めていくことが必要で、その負担は医療機関、国民が負うこととなります。税収は5年連続で過去最高を更新しているにもかかわらず、政府は大企業や富裕層への優遇税制をすすめ、大阪万博などの大型開発などに莫大な税金を注ぎ込んでいます。
昨年12月に現行保険証の新規発行が停止されました。マイナ保険証を所持していない人には「資格確認書」が交付されますが、一部の健康保険組合では申請主義の対応をとっていることが明らかになるなど、このまま現行保険証の使用期限となる12月の直前には、医療機関や市町村窓口での大混乱が予想され、12月以降、受診できない患者が発生することが危惧されます。
このことから、厚労省は、後期高齢者に限定し暫定的に全員に資格確認書を発行するとしましたが、そもそも国民全体のマイナ保険証利用率は本年2月の時点で26.62%と低いことからも、後期高齢者のみに限定される問題ではありません。今回の措置は強引に進めてきた健康保険証廃止の行き詰まりを示しているといえます。現実的に一番無駄がないのはマイナ保険証と現行の保険証の併用と新規発行の復活です。引き続き、国民が安心して受診できることを第一に考え、現行の保険証利用の無期限延長、全国民への資格確認書の交付も併せて求めていきます。
また、7月には参議院選挙があります。昨年の衆議院選挙では、全国各地での「保険証を残せ」という運動が一定の成果を上げたものと捉えます。その他にも自民党の裏金問題や特定宗教との関わり、マイナ保険証義務化に代表される強引な政治手法などが影響し、自民公明両党は過半数を割り、30年ぶりとなる少数与党となりました。選挙の際は、会員には様々な考えがあることから特定の政党や候補者の支援を行いませんが、候補者アンケートを実施し、その結果を会員内外に伝え、投票の判断材料としていただけるようにしていきます。これにより、医療現場と社会保障の充実を求める県民の要望に応える候補者、一方で党利党略や大企業、特定の業界のみを優遇し、国民皆保険制度や病院体制の強化など、住民生活には、衛生上においても必要不可欠であっても、政治家にとって旨味のない部門ということで耳障りの良い言葉で破壊するような政党や候補者を浮き彫りにすることを目的とします。
今回の診療報酬改定は、政府が進める医療DXに関する新設点数の算定が促されています。これは、現在でも合理的な説明がなされない現行保険証の廃止によるマイナ保険証の取得・利用を強要していることからも、医療情報という機微情報の収集とその利活用を推し進めるものであり、今後も電子処方箋のさらなる促進、電子カルテ情報共有サービスの整備、診療報酬改定DXによる共通算定モジュールの導入等が方針として挙げられています。これらにより業務の大幅な効率化が進むならまだしも、医療現場を顧みないスケジュールありきのシステムの強要は、システムの不具合やサポート体制の脆弱さから、かえって医療機関の負担や煩雑さが増していくことが予想されます。
これまでの経緯からも、医療機関への推進策として、診療報酬改定で対応させていくことが予想されます。現在の政府の推進する医療DXは、国民医療の向上や社会保障の拡充という視点とはかけ離れているものであり、さらなる医療情報の収集と利活用、それによる医療費削減とIT産業の草刈り場へと地域医療が変質させられようとしています。この一連の流れは、対応できない医療機関の再編・淘汰がこれまで以上に進みかねず、特に岩手県では人口減少地域をはじめとする地域医療の崩壊につながります。大都市圏の常識で構築される医療体制の推進には、最大限の警戒が必要であり、当会でも地域医療に尽力している医療機関を守るための要請活動などの運動と、適切な情報提供に取り組んでまいります。
改めて、このような大都市圏の常識による強引な政府の医療・社会保障切り捨て政策の姿勢を強く批判するものです。
次に、厳しい医療機関の経営に直撃しているのが物価高です。物価高騰への対応や医療従事者のさらなる賃上げ、すべての医療機関の感染症対策充実のためにも、期中改定による診療報酬の大幅引き上げが必要です。保団連では昨年、歯科の不合理是正要求をはじめ、初・再診料等、入院基本料等の基本診療料の大幅引き上げといった期中改定を求め、厚労省要請を行っています。岩手協会でも、地域の医療機関、医師・歯科医師が地域で果たしている役割、診療報酬大幅引き上げの必要性を国民に向けて情報発信、会員署名の筆数の向上、協会・医会および会員「全員参加」型の運動の構築、医療制度改善、社会保障充実を求める医療従事者や患者・国民の運動との連携などといった取り組みを進めていきます。これらを含め、会員調査の実施や署名活動等を通じて全国の保険医協会・医会と連動した取り組みを行ってまいります。
2022年6月の「骨太の方針2022」に「オンライン資格確認導入の原則義務化」「将来的な保険証の原則廃止」が掲げられて以降、協会・医会、保団連は、「オンライン資格確認の義務化撤回」そして「保険証を残せ!」運動を推進してきました。原告1,415人が提訴した「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」は、省令でオンライン資格確認を保険医療機関に義務付けているのは、健康保険法70条1項で定めている委任の範囲の逸脱であり、違法かつ無効なものであることを訴えましたが、東京地方裁判所の岡田裁判長は、特に人口減少地域での医療崩壊につながり、医療機関だけではなく地域住民も損害を被るという全国から寄せられた保団連、保険医協会・医会の資料を特定の団体の一部が主張しているにすぎないとし、国の主張を検証することなく受け入れた不当判決を言い渡しました。本年は控訴審が行われますが、医療機関、地域住民を守るため、訴訟への参加と支援を継続してまいります。
控訴審の結果で変わる可能性もありますが、昨年12月に健康保険証の新規発行が停止され、本年12月より現行の健康保険証の使用ができなくなります。マイナ保険証を所持していない国民には資格確認書が発行されますが、医療機関では、資格情報の確認について様々な形が導入されることにより、事務作業の煩雑さと混乱が予想されます。現行の健康保険証の利用継続を運転免許証と同様に併用できるよう国に求めていく一方、会員に対しては、配布物や新聞等による窓口での対応がスムーズに行えるよう的確な情報提供に努めてまいります。
歯科においては、歯科医療を守るため、歯科技工問題や人員確保に向けて保団連、全国の保険医協会・医会と共同で取り組んでいくこと、そのためにも、歯科医療費の総枠拡大に加えて、歯科医師の技術料と歯科技工物の保険点数の大幅な引き上げが不可欠であり、全国的な取り組みとして国会議員、厚労省要請を行ってまいります。また、オンライン資格確認カードリーダー設置義務化など、過度な医療DX推進は、ランニングコストの増加による小規模医療機関の閉院につながりかねません。機器の設置や請求方法など、医療機関の任意で選択できるような取り組みを行います。
活動報告でも述べたとおり、2024年度の組織状況は一定数の入会があったものの、閉院等による退会が相次ぎ、非常に厳しいものとなりました。2025年度も引き続き、世界情勢の見通しが不透明な中、物価高騰や様々なランニングコスト増が続くことが予想され、会員の高齢化も相まり、ある程度の自然退会が避けられない中ではありますが、協会活動や共済制度をアピールし組織強化につなげていくことが課題となります。医療提供体制の急速なデジタル化や複雑さの中、全国の保険医協会・医会が一体となり、医療現場の声を政府に届けること、いち早く適切な情報提供を行うこと、補助金などを要請する運動などで協会活動をアピールし、組織強化につなげてまいります。
組織拡大は保険医協会の目的を達成するためにも大変重要です。そのためにも、未加入の方への共済制度活用のアピールの他、会員のニーズにあった岩手協会主催のセミナー等の開催をしていく他、保団連情報ネットワークを活用した全国でのWeb研究会への参加など、保険医協会・医会の医科歯科10万7千人会員のスケールメリットと独自のネットワークを活かした情報発信を続けます。
また、通年ではないものの、新入会、会員紹介キャンペーンは多数の会員の方々にご活用いただいております。特典の内容も見直しながら、会員からの未入会の方の紹介を増やしていくことや、各専門部においても、組織拡大につなげる活動を企画していきます。また、いち早く医療情報を配信すること、請求実務、審査指導、税務に関することなど、困ったときにいつでも頼りになる保険医協会を目指していくため、事務局体制の構築にも努めます。
共済制度においては、「保険医年金制度」が、引き続き競合商品と比較しても有利な予定利率を確保できています。2024年度も投資商品などとの競合により加入は伸び悩みましたが、米国をはじめとする不安定な世界情勢により経済状況が不透明な中、改めて国内最大級のスケールメリットによる優位性と安定した運営のアピールと、保険医協会会員のみ加入できるメリットを強調した普及を推進します。
「保険医休業保障共済保険」については、日々制度改善に努めています。しかし、年齢の若い会員に活用されているとはいえない状況です。拠出金額が低くなっている若いうちから加入するメリットを強調して新規入会者や病気をした後だと加入が難しくなることから、早期加入を推進していくとともに、既往歴がある会員に対応できるような商品の紹介など、会員のニーズに沿った制度を目指していきます。
上記制度とともに、安価で大型保障となる「団体定期保険(グループ保険)」を加えて保険医協会の共済の三本柱としながら、委託生命保険会社と連携を密にし、募集体制を強化していきます。公的保障の少ない開業医会員を支える制度として、勤務医会員にとっては本人ご家族の将来の生活を支えるよう、安定した運営と普及に努めます。
昨年の衆議院選挙の結果に「保険証を残せ!」運動が寄与したのは明らかです。また、突如国から提案された「高額療養費制度の上限額引き上げ」案は、岩手県議会への請願の取り組みや全国的な運動の成果もあり、石破首相も8月の負担上限額の引き上げを見送った上で秋までに改めて方針を検討して決定すると表明しました。しかし、活動報告でも触れたとおり、「撤回」ではなく「見送り」であることから、治療を継続している患者にさらなる負担を強いて、財源を捻出するという手法、考え方そのものが社会保障の概念と相容れないとして、市民団体、患者団体などと連携しながら、提案を撤回させる取り組みを行ってまいります。
昨年12月に現行保険証の新規発行が停止され、このままでは、本年12月に利用もできなくなります。昨年実施した高齢者施設、障がい者施設を対象とした調査によると、マイナ保険証による受診や管理がどれほど困難なことであるかが明らかとなりました。先にも述べたとおり、マイナ保険証を所持していない国民には資格確認書が発行されますが、その業務は市町村に委任されており、市町村によっては、システムの改修やマイナ保険証の発行状況の把握などに追われており、マイナ保険証の利用が一気に増加した場合、カードリーダーのトラブルや制度の認知不足などにより受診できない患者が発生してしまうことも危惧されます。これを解決するには、現行保険証とマイナ保険証の併用、またはマイナ保険証を所持しているかどうかに関わらず、被保険者全員に資格確認書を発行することです。この取り組みを継続してまいります。
また、政府は地域医療の再編に向けた議論を進めています。診療報酬が低く抑えられ、消費税損税の影響などもある状況で再編統合や病床削減による医療費削減は地域住民への影響も大きく、到底受け入れられるものではありません。財政審では、第一線医療を担う開業医の役割を無視した開業医潰しともいえる政策を検討しています。具体的には保険医療機関の指定期間の短縮、管理者要件の見直し、診療報酬による対応などです。これらは、根本的に医師不足であることを認めず医師偏在であることに終始し、地方での医師確保や国民の良好な受診環境の整備などは考慮せず、ただただ医療費削減を狙っているものです。住み慣れた地域で安心して過ごせる医療提供体制の確保のため、医療費削減政策を見直し、第一線医療を担う診療所の安定的な存続と病院勤務医の確保を支援する政策を求めてまいります。病院再編統合については、他県では住民に十分な説明や理解を得ることなく計画が進んでいるところもあり、本県でも情勢を注視していきます。
歯科分野では、歯科医療費総枠拡大と保険でより良い歯科医療を目指して署名等に取り組み、昨年実施したアンケートを基にした歯科技工問題や無歯科医地区増加により明らかとなった人材不足や公的支援不足の解決に向けた要請行動などにも取り組んでまいります。
東日本大震災から14年が経過しました。本年2月から3月にかけて大船渡市で発生した山火事では、約3370haを焼失。震災でも被災し、山火事で被災し避難生活を続けている方もいらっしゃいます。被災者が経済的な問題で必要な医療を受けられないということがないよう、復興岩手県民会議などの諸団体とも連携し、医療だけではなく交通や生業などの諸問題を把握し、必要に応じて県、自治体等に要請してまいります。
また、昨年元日に発生した能登半島地震の被災者復興のため、会員から特別会費を募り保団連を通じて支援するとともに、被災地域の医療費負担免除のための国への要請やアンケート実施のため、保団連を通じて「石川県創造的復興プラン」に対する提言の賛同団体となり、岩手協会の被災者支援の取り組みや得た教訓などの資料提供や意見を述べました。引き続き支援を継続するとともに、万が一、他地域で災害が発生した際も岩手協会の取り組みを活かした支援を行ってまいります。
その他にも、県民の医療や健康にかかわる活動について、広範な団体や人々と連携しながら、地域医療崩壊を防ぐ活動を続けてまいります。
岩手県保険医協会は「国民の命と健康の確保を図る」「保険医の経営と生活、権利を守る」という目的を掲げて1974年の準備会設立後、1978年9月に正式に発足しました。長期化する円安や物価高騰により、診療報酬が補填されていない医院経営も国民生活も厳しい状況ですが、以下の各専門部の方針を基に、役員・事務局が一丸となり、保団連をはじめとする全国の保険医協会・医会や市民団体など広範な団体と連携をとりながら、活動を進めてまいります。