「岩手県保険医協会」国民の医療と健康の確保を図り、保険医の生活と権利を守る

 

ABOUT-岩手県保険医協会について-

2026年度活動方針

2026 年度診療報酬改定は、医療界が求めていた10% 引き上げには到底及ばず、疲弊した医療機関の経営を改善するには至っていません。診療報酬の10% 以上のプラス改定を、全国の医療界全体で要求し、2 年後を待たずに再改定を行うことが必要です。社会保障費については、毎年のように「高齢化に伴う自然増」が圧縮されています。与党に日本維新の会が加わったことで、患者負担増や給付制限など、さらなる国民負担を伴う制度改定が検討されています。こうした動きに的確に対応し、医療側と住民側が一体となって地方議会での意見書採択を目指すなど、地方から国政を動かす運動を進めてまいります。

活動報告にもあるとおり、医療機関の経営は、物価高騰や人件費の上昇により非常に厳しい状況が続いており、全国の病院・診療所の倒産件数は2025 年に過去最多を更新しました。今回の診療報酬改定も、現状を打開するには不十分な水準にとどまっています。会員の高齢化が進む中、医療DX の推進や慢性的な人材不足も重なり、閉院を余儀なくされるケースが増加しており、組織率の低下にもつながっています。岩手に限らず、人口減少地域における開業医を守ることは喫緊の課題です。地域の開業医が減少することは、住民の医療アクセスの低下に直結します。同様の課題を抱える全国の保険医協会・医会と連携し、地域医療を支える開業医を守る取り組みを進めることが、組織拡大にもつながります。

ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢など、国際情勢は依然として予断を許しません。日本経済もその影響を大きく受けています。高市首相は、米国のトランプ大統領との関係維持を重視していることから、米国から様々な要求を受ける可能性があります。それに対し十分な検討を経ずに対応すれば、大企業や富裕層への優遇を維持する一方で、国民生活や社会保障が犠牲となるおそれがあります。医療や社会保障を取り巻く情勢を注視しつつ、「地域医療を守る」という方針のもと、国会要請行動や住民との連携を適切に進めてまいります。

2026 年年明けには急遽、衆議院解散・総選挙が行われました。次の国政選挙は、早ければ2028 年夏の参議院選挙となります。一定の期間があるからこそ、中央への要請行動にとどまらず、県選出国会議員との対話や要請を積み重ねていくことが重要です。また、会員アンケート調査のプレスリリースや新聞投稿、新聞折込などを通じて世論喚起を図り、保険医や医療現場の要求実現に向けた活動を進めてまいります。

保険医の経営と生活、権利を守る主な取り組み

活動報告にも記載したとおり、2026 年の診療報酬改定では、増額分のうち賃上げ・物価高騰対応に2.99% が充てられ、純粋に療養の給付に充てられる財源はわずか0.1% にとどまっています。長年の低医療費政策により疲弊している医療機関の経営を改善するには、到底不十分な水準です。期中改定も視野に入れた診療報酬の増額を求めるとともに、算定漏れの防止に向け、会員への適切な情報提供や相談対応を強化してまいります。

また、国の医療DX 推進により、診療報酬上でも関連項目の新設や要件追加が行われていますが、機器導入後のランニングコストを十分に賄える内容とはなっていません。現在政府が進める医療DX は、医療情報という機微情報の収集と利活用を中心とするものであり、国民医療の向上や社会保障の拡充という観点とは乖離しています。医療情報のさらなる収集・利活用が進めば、医療費削減やIT 産業への利益誘導の側面が強まり、地域医療のあり方が変質しかねません。

今後も電子処方箋の普及促進や電子カルテ情報共有サービスの整備が計画されていますが、業務の大幅な効率化につながるどころか、これまでの経緯を踏まえると、現場を顧みないスケジュール優先のシステム導入は、システム不具合や地方におけるメーカーサポート体制の脆弱さも相まって、かえって医療機関の負担と煩雑さを増大させています。この急速な流れは、対応できない医療機関の再編・淘汰を招き、地域医療の崩壊につながるおそれがあります。こうした機器導入については、各医療機関が業務効率化の観点から主体的に検討し、規模や体制に応じて選択できる仕組みとするよう求めていきます。また、燃料費や物価高騰対策と無関係な補助金の支給要件として強制されることのないよう、是正を求めてまいります。

厳しい医療機関経営に直撃しているのが物価高騰です。長年の円安傾向に加え、世界情勢の混迷もあり、現時点で明確な解決の見通しは立っていません。2026 年の診療報酬改定では物価高騰対応分が措置されたものの、中東情勢悪化に伴う原油価格高騰の影響は十分に反映されていません。さらなる物価上昇に対応するため、診療報酬の期中改定や、物価高騰対応臨時交付金の大幅な積み増しなど、直接的な財政措置を講じるよう、全国の保険医協会・医会と連携して取り組んでまいります。

また、中東情勢の悪化により、原油由来製品を含む医療資材の流通・供給への影響も懸念されています。医療用ガウンやグローブ、注射器、点滴バッグ、カテーテルなど、日常診療に不可欠な資材の供給が滞れば、住民の生命と健康に重大な影響を及ぼし、感染症拡大時の対応にも支障を来します。国に対し、プラスチック製品や基礎的医薬品など重要医療資材の国内在庫確保と安定供給体制の構築を強く求めていきます。

コロナ禍の収束に伴い、医療機関への個別指導や税務調査も再開されています。勉強会や協会新聞、FAX ニュースなどを通じた情報提供に努めるとともに、会員からの相談対応を行います。また、未入会の新規開業医に対しては、新規指導対応を契機とした入会促進を図るなど、組織強化の視点も踏まえた活動を進めてまいります。

2022 年6 月の「骨太の方針2022」において、「オンライン資格確認導入の原則義務化」および「将来的な保険証の原則廃止」が打ち出されて以降、協会・医会および保団連は、その義務化撤回を求める運動を展開してきました。東京協会が主導して提訴した「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」(以下、オン資訴訟)では、省令による義務付けが健康保険法第70 条第1項の委任範囲を逸脱しており、違法かつ無効であることを主張しましたが、東京地裁は国の主張を十分に検証することなくこれを認める不当判決を言い渡しました。原告側は即時控訴しており、本年中に控訴審判決が示される見込みです。最終的には最高裁の判断に委ねられる可能性も高く、引き続き医療機関と地域住民を守る立場から、訴訟への参加と支援を継続してまいります。

歯科分野においては、保険で良質な歯科医療を維持するため、歯科技工問題や人材確保の課題について、保団連および全国の保険医協会・医会と連携して取り組みます。そのためには、歯科医師の技術料に係る保険点数の大幅な引き上げが不可欠であり、歯科技工士の処遇改善の観点からも、歯科医療費総枠の拡大が急務です。全国的な取り組みと連動し、国会議員や厚生労働省への要請を進めてまいります。
 また、医療DX の過度な強制は、規模を問わず医療機関に負担を強いるものであり、とりわけ小規模医療機関においてはランニングコストの増大が閉院の一因となりかねません。機器導入や請求方法については、各医療機関の実情を踏まえ、任意に選択できる制度設計を求めていきます。

会員のニーズに応える活動と組織を強化する主な取り組み

活動報告でも述べたとおり、2025 年度の組織状況は、一定数の入会があったものの、閉院等による退会が相次ぎ、非常に厳しい結果となりました。とりわけ3 月末の閉院に伴う退会は、過去と比較しても極めて多く、高齢化に加え、医療DX 対応の強制への対応の困難さや、導入後のランニングコストが経営継続を圧迫するなど、いわば開業医の淘汰につながる政策の影響も強く感じられます。また、会員数の減少にとどまらず、共済制度の加入申し込みも厳しい状況が続いています。今後は、より多くの会員に共済制度を利用いただけるよう周知を強化するとともに、入会と共済制度加入を連動させた新入会キャンペーンの実施などにより、会員数および加入者数の増加を目指してまいります。

組織拡大は、保険医協会の目的達成に不可欠です。2026 年度も、世界情勢の不透明さを背景に、物価高騰や各種ランニングコストの上昇が続くことが見込まれます。会員の高齢化も相まって、一定の自然退会は避けられない状況にありますが、未入会員のみならず既存会員に対しても、協会活動や共済制度の意義を繰り返し発信し、組織強化につなげていく必要があります。

共済制度については、「保険医年金制度」は、運営手数料の見直し等により元本回復期間が短縮されるなど、引き続き競合商品と比較しても優位性を維持しています。しかし、2025 年度も投資商品との競合により加入は伸び悩みました。世界情勢の不安定さを背景に経済の先行きが不透明な中、国内最大級のスケールメリットによる安定性や、保険医協会会員のみが加入できる利点を改めて訴求し、販促物の活用などを通じて普及を図ります。

「保険医休業保障共済保険」については、加入条件や給付内容の改善に取り組んでいます。拠出金が比較的低額である若年期からの加入メリットを強調し、早期加入を促進するとともに、既往歴のある会員にも対応可能な商品の紹介など、会員ニーズに即した制度運用を目指します。

これらに加え、低額保険料で高額保障が可能な「団体定期保険(グループ保険)」を含めた三本柱として、委託生命保険会社との連携を一層強化し、募集体制の充実を図ります。公的保障が十分とはいえない開業医会員を支える制度として、また勤務医会員にとっては円滑な開業移行を支援する制度として、本人および家族の将来を支える安定的な運営と普及に努めてまいります。

全国の保険医協会・医会が一体となり、医師・歯科医師をはじめとする医療従事者が現場で抱える課題や改善要求を政府に届けるとともに、迅速かつ適切な情報提供を行っていきます。さらに、補助金に関する要請活動や診療報酬関連情報の早期提供などを通じて協会活動の価値を発信し、会員ニーズに応じた岩手協会主催のセミナーの開催や、保団連情報ネットワークを活用した全国規模のWeb 研究会への参加を促進します。医科・歯科あわせて10 万6 千人の会員規模を有するスケールメリットと独自ネットワークを活かし、引き続き情報発信を強化してまいります。

県民の医療と健康を守るための医療運動に関する主な取り組み

健康保険証の廃止に伴うマイナ保険証への一本化は、医療現場および患者に混乱を生じさせています。そのような中、厚生労働省は、健康保険証による資格確認が可能な暫定措置を3 月から7 月まで延長し、さらに85 歳以上の後期高齢者全員に資格確認書を送付するなど、制度運用の見直しを余儀なくされています。こうした対応は、医療現場や患者のみならず自治体職員にも混乱を招いており、場当たり的な対応との指摘は免れません。現場の混乱を軽減するためには、マイナ保険証の有無にかかわらず、すべての国民に資格確認書を送付することが必要です。全国では、各市町村に対し住民全員への資格確認書発行を求める動きが広がっており、東京都杉並区議会においても全員発行を求める意見書が採択されるなどの動きが見られます。当会としても、県内市町村長および後期高齢者医療広域連合長に対し、住民全員への資格確認書発行を求めてまいります。

国は、財政制度等審議会の提言などを踏まえ、第一線医療を担う開業医の役割を軽視する政策の検討を進めています。診療報酬改定では物価高騰や人件費増加への対応が一定程度盛り込まれたものの、経営改善にはほど遠い水準です。さらに、本年度からは新規開業者に対し、地域で不足する機能の担い手となることを求め、従わない場合にはペナルティを課すという、新規開業抑制策ともいえる施策の導入が検討されています。これらは、国が医師不足という構造的問題を認めず、開業医・勤務医間や診療科間の偏在に問題を矮小化していることの表れであり、地方における医師確保や住民の受診環境整備の視点が欠如しています。住み慣れた地域で安心して生活できる医療提供体制を維持するため、医療費抑制策の見直しと、診療所の安定的存続および病院勤務医確保を支援する政策の実現を求めてまいります。

地域医療構想に基づく病床削減や病院の再編・統合については、他県において住民への十分な説明や理解を得ないまま計画が進められている例も見られ、本県においても病床削減が継続しています。昨年度の病床削減数に応じた補助金制度は、県内でも一次予算を超える申し込みがありました。これは、診療報酬の引き上げや消費税損税の解消といった抜本的対策が講じられない限り、病院経営が成り立たない現状を示しています。住民の良質な医療アクセスを守る観点から情勢を注視し、必要に応じて住民団体等と連携して取り組んでまいります。

歯科分野においては、引き続き歯科医療費総枠の拡大と、保険でより良い歯科医療の実現を目指し、署名活動等に取り組みます。また、歯科技工所の経営問題や歯科衛生士の人材不足、特に過疎地域における公的支援の不足といった課題の解決に向けた要請活動も進めてまいります。

東日本大震災から15 年が経過しました。被災地では、人口減少や高齢化、医療資源の不足など、震災以前から指摘されていた課題が現実の問題として顕在化しています。特に人口減少は交通インフラの縮小を招き、住民の医療アクセスの低下という悪循環を生んでいます。そのような中でも地域医療を支え続けている会員医療機関に対し、引き続き適切な情報提供を行ってまいります。また、15 年の節目を踏まえ、震災時における岩手県保険医協会の取り組みや教訓を整理し、今後の災害対応に資するものとして、全国の保険医協会・医会に発信してまいります。
 さらに、一昨年発生した能登半島地震に関しては、被災者の医療費窓口負担免除措置が終了しました。岩手協会としても、石川県をはじめとする被災地における医療費免除措置の再開を求める動きに連携し、要請活動を行ってまいります。今後、他地域で災害が発生した場合にも、これまでの経験を活かした支援に取り組んでまいります。

このほか、県民の医療および健康に関わる課題について、幅広い団体や関係者と連携しながら、地域医療の崩壊を防ぐ取り組みを継続してまいります。

最後に

岩手県保険医協会は「国民の命と健康の確保を図る」「保険医の経営と生活、権利を守る」という目的を掲げて1974 年の準備会設立後、1978 年9 月に正式に発足しました。長期化する円安や物価高騰により、診療報酬が補填されていない医院経営も国民生活も厳しい状況ですが、以下の各専門部の方針を基に、役員・事務局が一丸となり、保団連をはじめとする全国の保険医協会・医会や市民団体など広範な団体と連携をとりながら、活動を進めてまいります。